POD X3|高音質・多機能なマルチエフェクター

LINE6 POD X3

デジタル系のエフェクトやアンプで有名なLINE6が製造していたアンプシミュレータ。エフェクトも多数シミュレートしているため、実際はマルチエフェクターとしての顔が強い。

既に製造が終了している機材だが、後継モデルにはない魅力を多く持っている。今回は製品の特徴と共に振り返りたい。

目次

特徴

POD X3 - over view
POD X3

ラインナップとしては、PODおなじみの豆型「POD X3」、ペダルやスイッチがついた「POD X3 Live」、アンプヘッドタイプの「POD X3 Pro」の3種(画像は豆型)。基本的なスペックでは変わりはないが、形状やインプット・アウトプットの場所などで、これら3つのモデルが用意されている。

残念ながら今では3モデルとも製造が終了しているが、中古でも余力があれば入手したい機材でもあると思わせる特徴がある。その魅力をまとめる。

ギター・ボーカル・ベースに対応

POD X3シリーズの最大の特徴は、「ギター」「ボーカル」「ベース」の3種に対応したエフェクトがある点。これは後継機や他製品にはない、最大の利点と言っても良い。

レコーディングをやる人にとって、特にデモの制作などでは一人で何役もこなさなければならないことは多い。その時に複数の楽器があってもこれ1台あれば完結するというのは非常に大きな強みであり、この機種が今も人気に理由となっている。

POD X3シリーズが製造終了して間もなく、POD HDシリーズが発売されたが、こちらはギターが主軸となっている。POD X3が中古価格でも大分手に入りやすくなってきたことで、複数の楽器をこなす可能性がある人や、ベース弾きにとって、POD X3は十分に強い味方だ。

また、多数の楽器に対応しているからこその使い方もできる。(詳細後述)

エフェクトの数が豊富

もともとPODはアンプシミュレータとして世に出たが、エフェクターのシミュレータも多数入っている。そのため、マルチエフェクターと考えて相違ない。

特筆すべきは、シミュレートされている数。ギターアンプ78種、キャビネットモデル24種、エフェクト98種、ベースアンプ28種、キャビネット22種、ボーカルプリアンプ6種と、実に豊富だ。しかも、ただ数が多いだけでなく、いわゆる定番どころのアンプやエフェクトをおさえているため、狙っている音も作りやすい

細かな調整でカユイところに手が届く

マーシャルのアンプヘッドにアンペグのキャビネットと言った別なメーカーや楽器間での組み合わせ、更にマイクの位置も決めることができる。また、シミュレートしているアンプやエフェクトに本来ない項目のEQやPRESENSEなども調整できるため、音作りが非常にしやすい。

もちろん、エフェクトの順番を変えたり、かなりの数のエフェクトをつなぐこともできる。その上、1つのパッチに2種類の音色を作ることができるため、A+Bと言った作り込みができる。

音作りに関して言えば、逆にカユイところがあれば教えてほしいくらいである。

使ってみてどうだったか

改めてPOD X3についてまとめていると、「良い機材」と再確認している。

どういう点がそう思わせるのか、実際の使い方を踏まえて3つにまとめて紹介したい。尚、私はベーシストであるため、どうしてもベース視点で語ってしまうが、ギタリストでも共通しているところはあるのではないかと思う。

音質が良い

当たり前だが、音質がある一定以上良くなければマルチエフェクターを使用するメリットはない。POD X3はその点、十分合格点に達している。

よく「POD臭い音」と一般的に言われるのだが、私は一度もPOD臭さを感じたことはなく、またスタジオやライブでも指摘されたことはない。POD臭さとは、結局の所、十分にエディットできるものを詰めきらないと中途半端さが浮き出る=作り込みの甘さから、POD臭さという言葉が生まれてしまったのではないかと考える。きちんと作り込んでいれば、どんなシーンにも対応できる音色をたくさん作れる機材だと感じている。

1つのパッチで2つの音色

前述にもあるが、1つのパッチ内にAとBで全く異なる音色を作り込むことができる。これを使って、A/Bのみ、A+Bと言った使い方ができるため、活用する幅は広い

例えば、Aに生音系の音色を作り、Bに歪み系を作っておく。ベースの場合、音程感がしっかりと伝わる歪がほしい時にこういった組み合わせを行うのだが、これができるマルチエフェクターはほとんどなく、コンパクトエフェクターでやろうとすると費用だけで涙が出てくる。もちろん、ギターでも低音と高音を別々に作って混ぜるという方法もとることができる。

多様な組み合わせを試しながら音色をミックスできるのは、スタジオでもライブでも使いやすい優秀な点だ。

ギターのエフェクトをベースに掛けられる

そもそもギターのエフェクトをベースにかけるのか?という疑問を持つ人も多いかもしれないが、この使い方は実は結構実践的でもある。

ギターのエフェクトのLowがベースのMidに当たることもあり、特に歪み系の場合はいわゆる「抜けやすい音」を作るのに一役買うことがある。しかし、ギターの歪やプリアンプを使うとベースの低音部分がスカスカになってしまいがちだ。そこで、ベース用のエフェクトを掛けたり、前述のA/Bで生音側を作り込んだりする。今発売されている新しいマルチエフェクターで、こういった組み合わせができるものはほとんどない

友人には、ボーカルにギターのエフェクトをかけている人もいたが、これも非常に雰囲気が出て良い音だった。「ボーカルはボーカル向けエフェクト」という既成概念を超えて、実験的な取り組みが可能なのも魅力だ。

欠点はないのか?

こうして書いていくと、実にべた褒めである。というか、褒めすぎているほどに褒めている。

だが、POD X3にも欠点はある。それは「操作性の悪さ」「後継機の存在」である。

操作性の悪さについては、実際に触れてみると顕著にわかる。つまみやボタンはついているが、まず何を触れば良いのかわからない。POD初心者はマニュアル必読であり、慣れてきても操作に戸惑ったり面倒さを感じてしまうことがある。最近のマルチエフェクターは、パソコンに繋いで編集できたり、コンパクトエフェクターをいじる感覚で操作できたりと、手軽さ・操作しやすさを工夫しているものが多く、その中で比較するとどうしても操作性が悪いと感じてしまう。

また、後継機の存在も欠点として無視できない。POD HDはギターのみの対応だったが、更に上位機種のHelixの出現により、ベースにも高品位のシミュレータが誕生した。POD X3も音質の面で全く悪くないが、どうしても新しい機種の方がより精巧にシミュレートされていたり、時代に即した音色が入っていたりする。10年前の製品では、残念ながらその点では敵わない。

POD X3 - set
POD X3購入時に箱に入っていた同梱物

しかし、総評としては本当に良くできた機材で、中古で安く手に入るのであればオススメしたい。一時は中古市場でも出回っておらず、POD X3の全機種が入手困難だった時期もあったが、今ではチラホラと手軽な価格で出ていることもある。

個人的には、リハーサルやライブ用にPOD X3 Live、自宅のスタジオにPOD X3 Proをと複数台用意しておきたいなと考えてしまう程、良かった。

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