Ibanezの5弦ベース「SR505」。
価格帯としては、いわゆる初心者向けよりも一歩踏み込んだ10万円前後のものだが、マイナーチェンジを繰り返しながら10年以上販売されている定番ベースの一つです。
ベースといえば4弦ですが、このSRシリーズは5弦・6弦のラインナップもあるなど、ボディシェイプも相まって、特徴的なベースです。
今回は、楽器屋で試奏する機会がありましたので、その使用感をまとめます。
特徴的な5弦ベース
5弦に限らず、ベースと言えばどれもこれも特徴があるものです。しかし、SR505は特にほかのベースと違う点が、大きく3つ感じました。
ネックが薄く、弦間が狭い
Ibanez製品に共通しているのですが、ネックが薄いです。そして、弦と弦の間が他のメーカーよりも狭くなっています。ギタリストの友人に聞いてみてもギターも同様なようで、Ibanezの特徴のようですね。
この「ネックが薄く、弦間が狭い」というのは、手が小さい人でも握りやすいというメリットにつながります。特に、5弦ベースは初めて手にすると、その幅の広さに驚き、無理な力加減で左手の手首を痛めてしまう人もいるくらいなので、『なるほどな…』と納得できるものでした。
私は普段5弦ベースを弾いていますが、その感覚で言えば、逆に「弾き心地は全く違う」「スラップがやりにくい」という2点が弾いた印象でした。もちろん、それが悪いことだと言いたいわけではありません。細い方が弾きやすい人も多いと思いますし、世界的なプログレバンド「Dream Theater」のベーシストも自分用に弦間を狭くしたモデルを採用しています。
要は「弾きやすさ・鳴らしやすさは人それぞれ」だということであって、特筆する程に一般的なベースと違いを感じたというもの。カタログスペックではわからない部分だということです。普段から5弦を弾いている人にとっては「弾きやすいと感じるか、弾きにくいと感じるか」、 大きく感覚が変わると思いますので、一度弾いてみることをお勧めします。
つまみがわかりやすい
ボリューム、ピックアップバランス、3バンドEQと言う構成。よくある構成ですが、音作りは非常にしやすかったです。
ピックアップバランスで音の大まかなところを決めて、音量を決定する。2Volでは、音色が決まってもうまい音量にならなかったりするので、この構成は助かります。
また、3バンドEQはLow、Mid、Hiで、Midはスイッチで帯域を変化できます。特徴的だと感じたのはLowとHi。Hiは尖りすぎないため、強くしても耳に刺さらず、Lowは低音が飽和してしまうような帯域よりも少し上の帯域である印象でした。
つい迫力のある音を求めてLowを強めにしてしまうことがありますが、そうすると低音が飽和してしまい、逆に音が引っ込んだりすることもあります。そうしたことを回避するような設定なのかなと感じました。
ビジュアルが特徴的
エントリークラスからハイエンドまで、大多数のメーカーがFenderタイプのボディシェイプを採用していますが、SRシリーズはWarwickのようなシェイプになっています。これだけでも特徴的な印象を受けます。
ほら、人と違うことやっていると何かカッコいいじゃないですか…!! ね!!(*´Д`)
で、Warwickのようなボディシェイプではあるものの、Warwickは身体にズンと響くような低音が特徴、SRは重すぎない低音と選べるMidなど、音については別ベクトルを辿っています。ドライブをかけても、Warwickは唸るような感じで、SRは疾走感のあるバリバリさとキャラクターの違いが面白いです。
こうしたキャラクターの違いは、ユーザーにとって選択肢を増やしてくれるものです。選択肢が多すぎると、どれが良いのか決めづらい。Fenderタイプはこの傾向が出てしまいます。コンスタントに自分好みの音が出せるのであれば良いのですが、なかなか「好みってどんな音?」とわからないこともあると思います。ベース始めたばかりの頃だけでなく、5弦ベースを手にした時も私はそんな感じでした。
私個人としては、「ベースは気に入ったものが良い」と考えており、その中には「自分が好きな形状・ビジュアルである」ということは大事なものだと考えています。これからベースを始めたいという人にも、そうアドバイスしています。
SRシリーズは、ビジュアル面で少し違ったことをやりたい人・Fenderタイプが好きではない人が選ぶには良いものだと思いました。SRシリーズと同じような形状でパッと思いつくのは、WarwickやShectorなど。この時点で選択肢が限られてくるので、Fenderタイプのように膨大な選択肢の中から選ぶよりも楽だと思います。
早く選んで、多く弾く。楽器をやるなら、悩む時間よりも演奏に時間をかけたいですよね!
「弾いてみてみ?面白いから」と勧めたい5弦ベース
今回、SR505を試奏したのは「34インチの6弦ベースがないか」と探していたことが関係しています。というのは、SRシリーズの6弦は34インチだからです。同じ価格帯では、YAMAHAのTRBも5弦・6弦を出していますが、あちらは35インチなので、テンションが強すぎて弾きにくかったです。だから、この価格帯で市場価格10万円を切っている多弦ベースは割と貴重だったりします。
ただ、ボディシェイプが特徴的なために、一度SRシリーズのどれかは弾いてみたいと思っていました。その流れから、楽器屋にたまたまあったSR505を弾くことにつながりました。
感想は前述の通り。個人的には「初めて5弦ベースを持つなら選択肢としてアリ」というものです。
私は今、5弦ベースを主として使用していますが、5弦ベースを弾き始めたときは「指板の広さ」と「LowB弦の音とフレット位置が対応しない」ことの2つで悩みました。SR505は、前者の悩みを軽くしてくれるのではないか、と感じています。
5弦ベースのLowB弦。初めて触ったときに「5弦の何フレットはどの音が鳴るのだろうか」ということを覚えるのに苦戦しました。そこに、「指の位置がマジ弾きにくいんですけど!」という悩みも乗っかるとちょっと辛い。だから、導入としてSR505はアリなんじゃないかなと感じた次第です。
また、音色もLowが強すぎないのは音作りがしやすいと感じています。LowBを扱うと、よりEQのLowの扱いに困ります。迫力を出したいけど、音程感が失われてしまうなど、よく聞く話です。そこに対して、アプローチしやすいのではないかなと感じています。
あと、注意する点としては「ベースの構え方が真横ではない人は弾きづらいかもしれない」というもの。一般的によく見る「ボディとネックが体に対して垂直に構える人」ならば足にうまくボディが乗ってくれる為に弾きやすいものだと思いますが、私は少しネックを前にずらして弾いています。その場合だと足にボディが食い込んでしまい、少し弾きにくかったです。
そうした、「ネックの形状」「ボディの形状」のそれぞれが自分にマッチするかどうかで、「弾けるかどうか」まで左右してしまうベースがSR505だと考えます。ただ、初めて5弦ベースに触れる人にはオススメしたくなる一本でもあります。多弦ベースを考えていない人でも、普段Fenderタイプのベースを弾いている人でも、SR505は新鮮味を感じられるベースだと思いますので、ぜひ一度弾いてみることをオススメします。
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